「なぜ私の子供がピエロ？」難病「道化師様魚鱗癬」の子を産んだ日、若き母の苦しさと悲しみの記憶
難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び（9）
◆病名は「ピエロ」?
夫は冷静に説明を始めた。
私が眠っている間に、先生と話したことを。
冷静に、ゆっくりと、優しくも悲しい声で。
そして夫が言った病名を聞いて？？？
初めて病名を聞いたとき、正直、ふざけてるのか ? と耳を疑った。
その病名は、
道化師様魚鱗癬（どうけしようぎょりんせん）
はい ?
道化師・・・、ピエロ?
魚鱗・・・、魚のウロコ?
ピエロのような魚のウロコ
・・・・・・。
偏差値の低い頭をフル稼働させて考えた。
・・・うん。
いくら考えても訳がわからない。
フリーズしていると、夫が携帯で調べて見つけていたらしく、画像を見せてくれた。
確かに、よく似ている。
似すぎていて、さらに大粒の涙が溢れる。
どうしてこんな姿になってしまったのか、なぜ今までまったくわからなかったのか。
でも、まだ先生は、はっきりとこの病名を言わなかったらしい。
これ、かな ? という感じだったそう。
ハッキリとさせるためにも、検査が必要とのこと。
何ケ所かの皮膚をくりぬく検査。
夫は検査やら研究の協力やら、たくさんの同意書への記入を済ませていた。
私は何度も夫が見せてくれた画像と、目に焼き付いて離れない、息子の姿を見比べていた。
この病名のサイトを手当たり次第調べた。
でも調べれば調べるほど、苦しい。
胸が苦しい。
この日は一晩中泣いた。
夜中の搾乳（さくにゅう）は乳を搾る痛みと、心の痛みで、搾乳（さくにゅう）ビンをベッドに投げつけた。
隣の簡易ベッドで身を縮めて寝ていた夫を叩き起こし、
「搾乳できへん」
「もー嫌や」
「搾乳なんかしたぁない!!」
「むなしいわ!」と言い放った。
息子にとっては今一番必要である、大事な栄養を、母親である私は拒否しようとした。
なんて最低な母親。
しかし夫はそんな甘えは許さなかった。
すぐに看護師さんを呼ぶ夫。
夫は私のことをよく理解している。
他人の前では弱音を吐けない、という性格を・・・。
「どうしましたぁ?」と部屋にきた看護師さんに、
「ちょっと搾乳が上手くできないみたいで」とだけ夫は言い、
看護師さんの手伝いを得て、搾乳をすることになった。
「初めての搾乳（さくにゅう）はなかなか皆さん上手くできないもんで
すよ〜」
「いつでも手伝いますからね〜」と優しく言う看護師さんに、
「すみません、ありがとうございます」
とだけ答え、搾乳は無事に終わった。
そしてほとんど眠れないまま、また息子との面会の時間がやってきた。
（『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』より構成）
【参考資料】
本書をもとにCBCテレビ『チャント！』にて「ピエロと呼ばれた息子」 追跡X～道化師様魚鱗癬との闘い（6月26日17時25分より）が放送されました。
https://locipo.jp/creative/41a0b114-7ee7-4f24-976c-e84f30d2b379?list=5a767e90-3ff9-479c-a641-e72e77cf42c3
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KEYWORDS:
産まれてすぐピエロと呼ばれた息子
ピエロの母
本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。
「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」
このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。
陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。
また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。
障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。
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- 2019.11.09
